治療、療養中のユキヒョウ「アクバル」が、8月19日(土曜日)に死亡しましたのでお知らせいたします。
「アクバル」は平成18年(2006年)3月に多摩動物公園から来園して以来、これまでに3頭の子孫を残し、長きにわたり円山動物園で活躍してくれました。応援いただいた皆様には厚くお礼を申し上げます。
献花台につきましては、8月19日の午後より動物園センター案内前に献花台を設置いたします。
【個体情報】
愛称・性別・享年:アクバル・オス・18歳
生年月日:平成17年(2005年)6月7日、多摩動物公園生まれ
来園月日:平成18年(2006年)3月30日
死亡年月日:令和5年(2023年)8月19日
【経過】
令和5年(2023年)7月27日(木曜日)に、前年に抜け落ちる冬毛が残ったままであったことから、熱中症となることを防ぐため、麻酔下により冬毛の除去及び爪切り、血液検査等の健康状態の確認を実施しました。その後、7月31日以降に血尿や嘔吐、歩行のふらつきなど体調がすぐれない状態が続いていたため、治療、療養を続けておりました。8月19日午後から病理解剖を実施する予定です。結果については、ホームページでお知らせいたします。
【追記】
【令和5年8月20日追記】
ユキヒョウ「アクバル」の病理解剖を、8月19日に北海道大学獣医学部で実施していただきました。肉眼解剖所見は次のとおりです。
・重度脱水
・急性肺炎
・慢性膀胱炎
・肝臓および腎臓の混濁
急性肺炎、慢性膀胱炎、肝臓および腎臓の混濁については、肉眼的には直接的な死因となるほどの病変ではありませんでしたが、これらの所見に暑熱などの要因が複合的に影響して食欲不振、嘔吐、下痢を引き起こし、一般状態の悪化に至ったと推察されます。
発端となったと思われる麻酔処置(※正確な因果関係はまだわかりません)は、この夏を乗り切るためのものでした。
【追記】麻酔が引き金になった可能性はゼロではないものの、直接的な原因とは言えないかもしれません。
【令和5年8月3日追記】
ユキヒョウ「アクバル」「シジム」の麻酔処置は無事に終了しております。
「シジム」につきましては、毛の手入れの際に皮膚を負傷させたため、治療を行っております。
「アクバル」につきましては、以前から慢性腎臓病の初期状態を疑い投薬を行っておりましたが、血液検査ではその急激な悪化は認められない状態でした。投薬を継続し、引続き注意して観察してまいります。
【令和5年7月17日掲載】
ユキヒョウの「アクバル(オス、2005年6月7日生)」「シジム(メス、2010年5月16日生)」は、数年前から、本来は前年に抜け落ちるはずの毛がそのまま残ってしまう状態(以下、換毛不全と表記します)が続いております。
ハズバンダリートレーニングにより、麻酔をかけずに、毛の手入れを試みておりますが、全身の手入れは非常に困難な状況です。
かつて夏は冷涼と言われた札幌市も、近年は高温の日が続くことが多くなっています。もともと寒冷地での暮らしに適応したユキヒョウは、アンダーコート(皮膚を覆う下毛)が密で多いため、換毛不全により高温の影響をさらに受け、開口呼吸がしばしば見られており、このままの状態では熱中症になってしまうことが心配されます。
札幌市円山動物園基本方針「ビジョン2050」では、動物の治療等における負担軽減に努めることとしています。一方で、健康を損ねる要因を取り除き、疾病の発生や悪化を取り除くことを目的とした予防医学に基づく獣医療を提供することとしています。
ハズバンダリートレーニングにより、麻酔をかけずに採血および血液検査を実施し、前足の爪切りも行っていますが、後ろ足の爪切り、口腔内検査など全身の健康状態の確認も困難な状況です。
動物の麻酔におけるリスクはゼロではありませんが、今回、万全の態勢でユキヒョウの「アクバル」「シジム」に麻酔をかけ、健康診断および毛と爪の手入れを実施することとしましたので、お知らせいたします。
なお、処置の実施日は寒帯館屋内を閉鎖いたしますが、処置日は2頭別々ですので、当日に処置しない個体は屋外でご覧いただけます。
【麻酔処置実施日】
令和5年(2023年)7月20日(木曜日):「シジム」
令和5年(2023年)7月27日(木曜日):「アクバル」
【令和5年8月17日掲載】
ユキヒョウ「アクバル」の現状についてお知らせいたします。
8月16日から再び食欲不振となり、飲み薬による治療が困難な状況です。また、昨晩には嘔吐がみられ、屋内展示場の箱の中で眠っている時間が長くなっております。
屋内展示場および箱の中では治療ができないため、寝室へ収容して治療、療養させることといたしますのでご了承ください。
なお、本日は寝室で、吐き気を抑える薬、食欲を増進させる薬を注射しました。
引き続き治療を続け、再び展示場に戻れるよう最善を尽くしてまいります。
【令和5年8月15日掲載】
ユキヒョウ「アクバル」の現状についてお知らせします。
「アクバル」は吐き気を疑う症状のほか、8月13日午後から食欲低下が認められています。
吐き気の原因としては、持病の腎臓病の悪化や消化管の炎症などが疑われます。
食欲がなく、飲み薬による投薬が困難であるため、吐き気を抑える薬、食欲を刺激する薬、消化管における炎症を抑える薬を昨日夕方に吹き矢を用いて投与しました。
8月15日朝には採食を確認しています。
引き続き治療を続けていきます。
【令和5年8月13日掲載】
ユキヒョウ「アクバル」の現状についてお知らせいたします。
8月13日の様子は、嘔吐は見られず、11日よりふらつきや活動性はやや改善しているものの、吐き気が疑われる様子が見られるため、胃酸を抑えて吐き気を軽減させる薬を処方しました。未だ万全ではない状態のため、引き続き投薬による治療を続けていきます。
なお、警戒心が強く採血にはまだ成功しておりません。
体調の変化が見られましたら、都度、ホームページにてお知らせいたします。
【令和5年8月11日掲載】
ユキヒョウ「アクバル」(18歳、オス)の現在の状況についてお知らせいたします。令和5年7月27日に麻酔下で冬毛を除去する処置を実施しました。また、併せて血液検査とレントゲン検査を実施しました。
しかし、その後から血尿や嘔吐が認められ、体調がすぐれない状態が続いています。
経過は以下のとおりです。
7月27日 麻酔下で冬毛の除去と血液検査、レントゲン検査を実施。
7月31日 食欲良好。少量頻回の血尿を認める。膀胱炎と診断し抗生剤、消炎剤による治療を開始。未消化便を排泄。(午後から展示中止)
8月2日 食欲良好。血尿が治まらないため、消炎剤を変更。(休園日)
8月3日 食欲良好。嘔吐が1回認められたため、胃薬による治療を開始。(展示再開)
8月5日 食欲良好。嘔吐が1回認められる。血尿は改善傾向。
8月6日 食欲良好。嘔吐が1回認められる。1か月前より4キロ体重が減った。
8月11日 食欲良好。やや活力が落ちている。歩行時に後肢の若干のふらつきあり。体重は2キログラム増えた。
以上の経過から、麻酔が体調不良のきっかけになった可能性については否定できません。そのため、再度麻酔下で検査するのは得策ではないと考えております。
現在、ハズバンダリートレーニング下の採血を試みているところですが、ハズバンダリートレーニング下の採血は成功率が低く、これまでのところ成功していません。粘り強くチャレンジし、内臓機能の再評価を実施します。
引き続き、「アクバル」の状態を確認しながら、治療に取り組んでまいります。
最後に、この度は麻酔後の体調不良や展示の中止について適時に公表していなかったことをお詫び申し上げます。
今後は、このホームページに追記する形で、「アクバル」の体調についてお知らせしてまいります。
※ハズバンダリートレーニング:動物に協力してもらいながら、診療や世話を行うためのトレーニング。動物に麻酔を施すことなく、血液検査等が可能になる。
治療・療養中のアクバル。これが近影となりました。
8/6が最後の更新となりました。
亡くなってもすぐにはいなくなりません。
もし麻酔しなかったら…というタラレバ批判はしないでほしいと思います。
もし麻酔せずに冬毛モコモコのままだったら結局この夏の暑さにやられていたかもしれません。
そのようなタラレバには何の意味もありません。
(実際麻酔から体調悪化まで数日のタイムラグもあるのでハッキリと因果関係があるとは言い切れないというのもあります)
タラレバを言うべきは地球温暖化(気候変動)についてではないですか。
札幌の夏の気温がここまで上がっていなければアクバルはもっと長生きしたかもしれない。
よくホッキョクグマガイドでは、野生のホッキョクグマが暮らす北極圏の温暖化を訴え、彼らを守るために私たちが出来ることを考えましょう、というメッセージを発信されています。
ところがもはや遠くの北極どころか日本国内の動物園の動物を守るために行動しなければならないほど事態は深刻なのだと強く言いたいです。
話が逸れてしまいました。
アクバルは2005/6/7、多摩動物公園にて父シンギス母マユの間に双子シリウスと共に生まれました。
アクバル(Akbar)はアラビア語で「偉大な」という意味だそうです。
2006/3/30、円山動物園へやってきました。
当時はまだアジアゾーンが無く熱帯動物館に入居しました。
同年ドイツ(ポーランド生まれ)よりやってきたリーベ(現浜松市動物園)とペアとなり、2009/5/2、ユッコ(多摩動物公園→現王子動物園)とヤマト(旭山動物園→2021死亡)の雌雄双子をもうけます。
さらに2011/5/1にメスのリアン(現東山動植物園)が生まれます。アクバルとリーベの間には計3頭の子どもが出来ました。
ユッコとリアンからはまだ孫の報告は届きませんが、ヤマトは旭山でジーマとの間にリヒト(現大森山動物園)とユーリの2頭の孫をつくりました。
さらにリヒトとアサヒとの間にヒカリというひ孫まで出来ました。
2012年に完成したアジアゾーンの寒帯館に移動し、また2017年からはシジムとのペアリングにも挑戦し、数回出産しましたがどれも生育には至りませんでした。
では過去の写真でアクバルを振り返ってみたいと思います。
最近から昔へと遡ります。と言っても昔の写真はあまりありません。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
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